人間は医者の診断なしにいきなり手術をしませんが、建物リフォームは設計者の診断なしに工事にかかります。業者まかせで心配ではありませんか?
設計者としては正しい診断をしてからの方がと、ついそう思ってしまいます。
リフォーム診断 → リフォーム設計 → リフォーム工事
このような順番に行うのが間違いのないリフォーム工事だと思うのです。
診断とは、『異常の有無を判断し、異常があればその種類を同定し、何らかの介入(修理)が必要かどうか判断する作業を診断という』
人間には、健康に生きていくうえで最も身近な診断に健康診断がありますが、人間と同じように建物にも経年による劣化を調査し、快適で安全な長寿命化のためには診断が重要な役割を果たします。
木造住宅のリフォーム診断には、耐震診断・劣化診断・エネルギー診断・機能診断等が在ります。その中でも今、最も注目を集めているのが、耐震診断です。
耐震診断:1981年以前の古い基準の2階建建物は、大きな地震に耐えらません。当時は基準がゆるく、現場の裁量に任せていた部分が多く、本体強度にばらつきが有ります。又、木造住宅の強度基準は10年前にもバランスと金物の安全に関する追加項目がありました。建物本体の倒壊に係わることですから、慎重な診断が必要で、工学的考察も要求されます。一般的には、間取りを元に壁量計算か構造計算によって安全確認を行います。
劣化診断:時間の経過とともに、建物各部の劣化等が進行します。特に外壁、屋根の仕上は劣化が早く、10年が目安となり、劣化の進行に合わせた改善計画が必要になります。又、内部は床支えの緩みによるきしみやへたり、仕上材の伸縮による亀裂等がおこりますし、水周りの機器の劣化は心地いいものではありません。
エネルギー診断:比較的新しい建物は、断熱・気密に配慮していますが、以前の建物は雑なものが多く、温熱環境にかなりの差があります。又、設備機器の経年劣化はエネルギー消費にも大きく影響します。
機能診断:時代に求められる性能や機能を備えているか、家族構成の変化や現在の生活に合った間取りになっているかは、とても重要な快適な住まいの条件です。大規模改修の場合は特に重要なポイントになります。
診断の結果を踏まえ次に設計になりますが、診断の結果を生かした木造の改修設計は総合的な判断が出来るかどうかです。いずれも住まいにとって重要な項目です。リフォーム設計は既存のものを活かしながらの対応をするために経験と知識が必要になります。そして工事の指導も設計者の役割になります。
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