小住宅を設計者に頼まない理由として
設計者に頼むと設計料がかかる
敷地が狭いので、設計者に頼むまでもない
普通の家でよい
その他の方法が自分達に合っているから |
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が多く聞かれること。
1.についてはそのとおりだが、他の場合はどうなのか?
同じようなことをしているのですから経費はどこかに含まれているというところまでが前回までの話。
こうしてみると、設計者に設計料を支払ってその対価を受け取るか、前回書いたようによく分からないところで、設計料の名目でなく工事費の内で徴収されるかの違いということになります。
徴収されるにしても、設計者に払うより金額が安いからよいと思うかもしれません。
それは目的が違うからです。
ハウスメーカーや工務店は工事受注が目的です。
設計はあくまでもそのための手段でしかないからです。
ですから「サービス」という言い方は正しいのかも知れません。
また、ハウスメーカーは「営業設計」と言います。
なかには「このプランの中から自由に選んでください」と。
まさしく設計行為が工事受注のための営業なのですね。
そうなると、その設計で満足する人にとっては、設計者に支払う設計料は高いということになるのでしょうか。
それでは、一般の人達にとって、設計者に頼む際の設計、監理料とは本当に高いものなのでしょうか?
狭小敷地の一般的な建物の規模は30〜35坪前後、工事費2,000万円で設計料10%として200万円。
設計者の設計料というのは、一般に監理料を含みます。
監理とは、現地に行って「設計図どおりに仕事が行われているかどうかを見ること」です。
設計と監理の比率は7:3程度です。
つまり、140万円が設計料です。
この金額で建主と打ち合わせをして2〜3ヶ月かけて図面40枚前後を描きます。
この図面に建築主の希望をまとめるのです。
それから、図面に基づいて出された工務店からの見積りのチェック、工事会社の選択の手伝い等が主な仕事になります。
140万円の金額は確かに大きい額です。
しかしそれは、設計者が建主に代わって、家づくりにかける時間に対して支払われる金額です。
建主が望む快適で安心な家づくりを、専門家としてお手伝いするのです。
しかし、それだけでなく設計者はローコスト化を心がけています。
今までの経験から、出された見積りのチェックで工事金額が高いと思えば、安く仕事をする職人やメーカー、器具等の紹介をします。
それだけでも設計料分くらい建築費は安くなるのです。
監理は、設計図に基づいて工事をしているか、現場で直接見るのです。
最近、欠陥、手抜き工事とテレビ等で盛んに取り上げられていますが、専門家が確認しますから安心です。
また、色決め、材料の最終決定等のアドバイスをします。
それだけではなく、事務所内で、工事会社から出される施工図をチェックしたり、材料のチェックをしたりと建主に代わってする仕事量は多いのです。
これらにかかる時間に対して支払われるのが監理料です。
2. について(敷地が狭いので、設計者に頼むまでもない。)ですが、建物は土地という制約の中でしか存在しないわけですから、敷地によって建物の大きさが決定されるのは当然です。
しかし、同じ大きさでも内容が違った場合、住まいの価値は同じでしょうか?
私が考える設計−人間の心理を寸法(数字)で表現する行為−の重要性はここにあるのです。
付加価値を生むということ。
特に狭小敷地では、どうしても建物全体面積が少ないわけですから、いかに有効利用するかです。
その場合は建物全体の可能面積を出し、間仕切りをして割って、必要室の面積を確保していく方法が一般的です。
これは、大きな敷地で理想の室を並べていくのとは逆になるわけです。
それだけに時間をかけて、もっとよい方法はないか理想を探すのです。
そうすると、かけた時間だけ結果がよくなるのです。
1日や2日で間取りを描いて設計が終わるのではなく、設計者は平面のみならず立体的に検討し、光や風通し等、あらゆることを考えて設計するのです。
3. の普通の住まいでよい−についてですが、本来どんな人も生まれながらにして、住まいについての基準を持っているわけではないと思うのです。
何らかによって、学習したり、体験しているのです。
昔のように土地も広く、人々の生活があまり異ならない時代は、大工の棟梁が設計し、同じような建物で満足できたでしょう。
しかし、今日のように都市居住者の生活が多様化してくると、それぞれの生活に合った住まいが必要になるのではないでしょうか?
まして、狭小敷地となると1m2も無駄にはできません。
専門家の知恵は役に立つと思いますが…。
4. について(その他の方法が自分たちには合っているから。)は、自分に合っていればそれでよいと思います。
しかし、一般の人はとかく住まいを想像するとき、切り取られた生活場面は描けるが、全体像が描けないものです。
その点を何でうめるかです。
住宅展示場や営業マンのセールストークでうめることができるでしょうか。
実はそのことが家づくりの一番難しいことなのです。
以上のように1.〜4.までの小住宅を設計者に頼まない理由に対して、知らないがために誤って理解しているのではないかと思われることを挙げてみました。
それでは、実際に設計を頼む人は、何を期待し、設計者をパートナーに選択したのでしょうか?
次号から実際に私が手掛けた例を紹介いたします。
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