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私共が考えるローコスト住宅

私共がローコスト住宅を考えるとき、「材料単価を安く」や「形をシンプルに」等は、一般の人に説明して理解され易いのですが、本当に専門家として知っていなければならないことは、建物ができるまでの仕組みなのです。その仕組みの中でも、コストとプライスの関係があります。コストに大きく影響するのが職人の人件費です。着工から完成まで数十種の職人が関わります。そのことからも建物に関わる職人達の仕事内容を理解できるかどうかということが大切です。又、コストとは別にプライスも大きな比重を占めることも知っていなくてはなりません。

職人の腕とは、「慣れとか経験」によって培われたものです。その「慣れ」た部分を利用した設計ができれば職人の作業性が増し、施工の生産性が上がります。又、設計の工夫で数量(床面積あたりの壁量、構造材、建具等)を少なくすれば、施工手間がかからず、手間賃が安くなることでローコスト化につながるのです。そして、生産性が上がれば、工期が短くなり、経費(プライス)も安くなります。

設計者に求められるローコスト化とは、単に材料や下請職人の手間を合理化することで下げるだけではありません。合理的構造システムの構築であり、プランニングによって材料の軽量化を図り、その中で豊かな空間を造ることです。又、私達は今まで長く住宅造りに関わってきたことで色々なタイプの工務店を見てきました。住宅の規模や種類に合わせて施工会社を選ぶことでローコストで造るノウハウを取得しましたし、状況によって協力を仰ぐことのできる施工会社もあります。求める住まいを多方面から検証して努力をすることで可能になるのです。

私共の設計した住まいを見て、ライターの人が「ローコストには見えませんね。」と言います。一般の人が見ても分かりませんし、仕上がってから専門家が見ても理解できないのです。それは、木造在来(軸組)工法については、私共が今までの経験によって、現場での仕事に関する知識を得てきたから可能なのです。そして、数多くのローコスト住宅をつくってきました。

これらのことをふまえて語ったことをライターの杉内さんがまとめて、主婦の友社「はじめての家づくり」に掲載したものが次の内容です。目を通してみてください。


 注文住宅のコストダウン 知っておきたい基礎知識
 注文住宅のコストダウン テクニック1 プランニングの工夫
 注文住宅のコストダウン テクニック2 使用材料、設備で工夫
 注文住宅のコストダウン テクニック3 施工面で工夫
コストを抑える家づくりを始める前に これだけは知っておきたい基礎知識

コストダウンするために、最低限、押さえておきたい知識をまとめました。
限られた予算内で家づくりを成功させるための秘訣が、少しずつ見えてくるはずです。


どこに家づくりを依頼すれば成功する?
どんな方法がコストダウンにつながる?
コストダウンしてはいけない部分とは?
ランニングコストも考えて家づくりを
「どうしてもの夢は代替案でフォロー
コストとプライスの違いとは?
建てる地域や時期もコストに関係する


どこに家づくりを依頼すれば成功する?

家づくりを始める際、まず頭を悩ませるのが「どこに依頼するか」という問題です。
特にコストを抑えるとなると、いっそう慎重に選ぶ必要が。
ハウスメーカーと設計事務所のそれぞれの特徴を説明しますので、あなたの家づくりの姿勢と照らし合わせて検討してください。

ハウスメーカー

すでにでき上がっているものを「選ぶ」のが好きな人は、ハウスメーカー向きといえます。
たいていどのメーカーでも、価格帯の違うプランを用意しているので、自分の予算に合わせて選べます。
こまかく打ち合わせを重ねるのがわずらわしい、あるいはなるべく早く完成させたいという人におすすめします。

設計事務所

建築家(設計者)に依頼する家づくりで、服でいえばオートクチュールにオーダーする感覚です。
「コストは抑えたいが、自分の暮らしに合わせてじっくりプランをねり、希望を実現させたい」というように、エネルギーを使ってでも、「つくる」のが好きな人におすすめです。

建築家と建主は、対等な「パートナー」として、打ち合わせを繰り返しながら二人三脚で家づくりを進めるため、「お客」としての立場から、いろいろ要望を出したい、という人は、ハウスメーカーのほうが向いています。
また、コストを抑えながらも快適な家にするため、建築家の側から、一般の人では考えつかないような新鮮なアイディアが提示されることも多いので、家に対する考えが固まっていて、柔軟な発想に抵抗を感じるタイプの人にも、あまりおすすめできません。

建築家は予算内におさまるようにプランや工法、材料などを検討するだけでなく、工務店の見積りをチェックして、建主に工務店選びのアドバイスをしたり、着工後、設計図どおりに施工されているか、工事監理も行います。
このため、コストを抑えても、手抜き工事をされるなど、施工面の心配がありません。

ただし、建築家のなかにはいわゆる「豪邸」ばかりを手がけている人もいるので、雑誌などを参考にして、コストダウンのノウハウを多くもっている建築家を選ぶようにしたいもの。
狭小地のように条件が厳しい場合も、慣れている人を選ぶことが大切です。

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どんな方法がコストダウンにつながる?

大きなポイントは、低価格でも納得のゆく材料を選び、使う量を最小限にすること。

高価な材料を大量に使えば、住み心地のいい家になるとは限りません。
シンプルなほうが、かえって快適に感じられることも多いのです。

また、家づくりには数十種の職人がかかわります。
現在は人件費が高いので、工事の効率が上がるようなプランにして人数を減らしたり、職種をしぼった工法にする、なるべく工場でつくって現場へ運び、現場の手間を省く、といった工夫も必要です。
 具体的なテクニックは、次ページから説明します。

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コストダウンしてはいけない部分とは?

基礎や構造といった安全にかかわる部分は、コストを削るべきではありません。

また、部屋の広さも、最低限自分たちに必要な広さは確保したいもの。
特に生活の中心になるLDを、コストを抑えるために狭くしてしまうと、せっかく家を建てても快適な暮らしができません。

車庫も、もし2台分必要なら、多少コストがかかっても2台分つくっておくことをおすすめします。
でないと結局、別に駐車場を借りることになり、出費がかさんでしまうのです。

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ランニングコストも考えて家づくりを

「コスト」と一口に言っても、大きく2つの意味があります。
ひとつは「イニシアルコスト」で、これは、「イニシアル」「初めの」の意味どおり、工事費や設備の購入・設置など、住まいの建築時にかかる費用。
もうひとつは「ランニングコスト」で、「ランニング」、つまり運転するの意味からもわかるように、快適な暮らしを維持するためのコストです。

一般的に、コストダウンというと、「イニシアルコスト」を中心に考えますが、「ランニングコスト」を抑えることも考えて、冷暖房費を抑えられるような、通風や採光に配慮したプランにするなど、工夫したいものです(テクニック(1)を参照)。

ただ、ランニングコストを抑えようとすると、どうしてもイニシアルコストがかかる場合もあるので、どちらを優先させるかをよく検討してください。
たとえば、外壁を長もちさせる塗装はコストがかかりますが、その部分でコストダウンすると、必要なメンテナンスの頻度は高くなります。
つまり、「美しさが長もちする家」と、「手入れして長もちさせる家」のどちらを選ぶかということです。

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「どうしても」の夢は代替案でフォロー

限られた予算内では、あれもこれもとすべての希望をかなえることはできません。
ですから、自分の希望が予算と折り合わないときは、そのこだわりがほんとうに必要か、見直す必要があります。

たとえば、今注目されている自然素材。
それほど強い自然志向ではなく、健康面でも、すべて自然素材にしなければ健康を維持できないという体質ではないのに、周りのブームに押されて、「これでなければ」と思い込んでしまう人もいるようです。
ちなみに、健康に配慮した自然素材を家じゅうに使うと、本体工事費が約1割増しになるといわれています。

このように、過剰なこだわりをなくすことでコストダウンできるケースは、意外と多いのです。

けれど、どうしてもあきらめられないときは、家の完成後も悔いを引きずらないように、ムリにあきらめるのではなく、代替案でフォローすることを考えましょう。
たとえば、健康に配慮した住まいにしたいなら、自然素材を使うかわりに、窓の配置を工夫したり、中庭を設けるなどして通風をよくします。
こうして住まいに十分風を通せば、ダニやカビ、結露の発生は防げるのです。

コストダウンするといっても、最低1000万円以上かかる大きな買い物。
あきらめのつく部分、つかない部分をきちんと整理して、後悔のない家づくりを。

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コストとプライスの違いとは?

基礎知識の最後に、コストとプライスの違いにふれたいと思います。

コスト(建築原価)とは、建物をつくるのに必要な金額=材料費や大工手間賃などです。
一方プライス(販売価格)とは、建主が施工者(工務店やハウスメーカー)に実際に支払う金額。
この中にはコストのほかに営業経費や利益が入ります。
つまり、努力してコストを抑えても、プライスが高ければ、その努力がムダになるというわけです。

ですから、まず、どんな材料を使っているのかなど、工事内容を明確にして、コストが適正かどうかを確認し、そのうえでプライスが適正かどうかを見きわめたいものです。
見積りは素人ではわかりにくい部分が多いのですが、不明点は納得のゆくまで質問することが大切です。

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建てる地域や時期もコストに関係する

コストには、設計では解決できない要因があり、そのひとつは、地域や土地による条件の違いです。
たとえば、職人の賃金は地域によって違います。
軟弱な地盤に建てる場合は、基礎をしっかりしたものにしなければならず、その分、コストがアップ。

また、首都圏の住宅密集地は、資材置場がなかったり、車が止められなかったりするため、駐車場などを借りなければなりません。
交通渋滞で材料の運搬や職人、関係者の移動に時間がかかり、人件費のロスが大きくなったり、近隣建物への配慮が必要となって仮設費、諸経費が割高になったりするなどの理由で、一般住宅地よりコストが10%ほど上がります。

もし土地の選択肢があるなら、このような場所は避けたほうがコストを抑えられます。

時期もコストの影響しますが、バブルのころにくらべれば、現在のほうが、たいての工務店が抑えめの賃金で工事を請け負ってくれるうえ、住宅ローンの金利も低いため(住宅金融公庫の金利についてはテクニック(1)のコラムを参照)、その意味では、現在は建てるチャンスといえるでしょう。

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注文住宅のコストダウン 知っておきたい基礎知識
注文住宅のコストダウン テクニック1 プランニングの工夫
注文住宅のコストダウン テクニック2 使用材料、設備で工夫
注文住宅のコストダウン テクニック3 施工面で工夫


テクニック<1> プランニングの工夫でコストダウン

具体的なコストダウンテクニックの最初にご紹介するのは、家の形や間取りなど、プランニングに関するもの。
成功のキーワードは、「シンプル イズ ベスト」です。


家の形はなるべくシンプルに
屋根の形もなるべくシンプルに
コストダウンできてスペースもとれる総2階
仕切りの少ないオープンな間取りに
水回りはなるべく1ヶ所にまとめる
採光、通風に配慮したプランに
改造の予定があるなら手を加えやすくしておく
低金利で公庫の融資を受けるには


家の形はなるべくシンプルに

前のページでお話ししたように、コストダウンの大きなポイントのひとつは、使う材料や工事の量を減らすことです。

プランニングの面でこのことを実現するために、まず第一に考えたいのは、「家の形をなるべくシンプルにする」ということ。

図を例に説明すると、下の上下の図は、どちらも全く同じ面積です(ひとますを1m2とすると30m2)。
ところが、上のシンプルな形の場合は壁の量が26なのに対し、下の複雑な形では、その量は30とふえてしまいます。

シンプルなプランと複雑なプランの壁量の比較

壁の量がふえるということは、壁の材料や壁を仕上げるための工事の量がふえるということです。
また、基礎の外周が長くなって、その分の材料や工事の量がふえることも見逃せません。
こうした理由から、家の形が入り組んでいると、その分コストは上がってしまうのです。

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屋根の形もなるべくシンプルに

屋根の形も複雑になると、材料や工事の手間が余分にかかり、コストアップしてしまいます。
コストダウンにつながるのは、切妻屋根(下のイラストの右側を参照)のような、ごくシンプルな屋根です。

屋根の形はシンプルに

ただ、形がシンプルでも、勾配がきついとその分屋根の面積が広くなり、6寸勾配以上になると(数字が大きくなるほど勾配がきつい)、足場を組まなければならないため、足場の材料や手間がかかることになります。

また、軒を出すとその分屋根の面積が広くなり、軒裏を仕上げる手間もかかるため、意外とコストがかかります。
ただ、軒を出したほうが日ざしを遮ることができて冷房の費用を抑えられたり、外壁の傷みも少なく、塗りかえなどの頻度も抑えられます。
イニシアルコストを抑えるか、ランニングコストを抑えるかの問題なので、資金計画に合わせて検討してください。

狭小地の場合は、軒を出さないほうが、コストを抑えられるだけでなく、その分建物を広くとることができます。

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コストダウンできてスペースもとれる総2階

「家の形をシンプルに」ということは、立体的なプランにも、そのままあてはまります。
総2階建てにすると、下屋部分(1階の屋根)をつくらなくてすむため、屋根の面積を減らすことができ、一部2階建てとくらべると、10〜15%も安くなります。
また、通し柱や梁などの構造がシンプルになって、その分、木材が少なくてすみます。

総2階にすると、このようにコストダウンにつながるだけでなく、2階も1階と同じだけ床面積がとれるため、スペースを最大限確保できます。
「予算を抑えて、しかも広く」という2つの要望を、同時に満たすことができるのです。

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仕切りの少ないオープンな間取りに

部屋数を多くとって仕切りをふやすと、壁や建具などの材料がふえ、工事の手間もかかるため、コストアップしてしまいます。
また、部屋が多い分、照明器具やコンセントなどもふえ、設備関係の費用もかかってきます。
間取りを考える際、つい「○部屋ほしい」というように、部屋数を多くとることを考えがちですが、実際には、部屋数がふえると、各部屋の面積は小さくなって、開放感が得られないというデメリットもあるのです。

リビング、ダイニング、キッチンをそれぞれ独立させるのではなく、広々としたLDKをとり、間はカウンターで仕切るなどの方法をとると、コストダウンにつながり、同時に開放感も得られます。

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水回りはなるべく1ヶ所にまとめる

キッチン、浴室、洗面所、トイレといった水回りを1ヶ所にまとめると、上・下水道や給湯配管が短くなるため、配管工事費を抑えることができます。
このように水周りを1ヶ所に集中させると、料理と洗濯などを短い動線で行うことができ、家事効率があがるというメリットも得られます。

ただし、階ごとにまとまっていても、たとえば2階のトイレと1階の水回りの場所が離れていたのでは、それだけ配管を延ばさなければならず、ムダが生じるので、上・下階でも、位置をそろえるように注意しましょう。

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採光、通風に配慮したプランに

日当たりや風通しに配慮したプランにすると、夏涼しく、冬あたたかくなって快適に過ごせるのはもちろん、冷暖房費を抑えることができる、つまり、ランニングコストを抑えることができます。

日当たりをよくしたいけれど、住宅密集地などのため、思うように窓がとれない場合は、高窓や天窓を設けると、プライバシーを守りながら、日ざしをとりこめます。
反対に夏の強い日ざしを遮るには、軒やひさしを出すのが効果的ですが、前述の屋根の項でも説明したように、イニシアルコストは高くなってしまうので、ランニングコストとどちらを優先させるかを、検討してください。

通風をよくするためには、風の通り道を考えて東西南北に窓を配しますが、大きな窓がとれないところも、通風のための小窓を設けるだけで違います。
窓の高さは高低差をつけると、効率よく風が通ります。

また、中庭を設けると採光、通風ともよくなって快適。
その分部屋は狭くなりますが、視覚的にはぐんと広がりが感じられ、心のゆとりにもつながります。

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改造の予定があるなら手を加えやすくしておく

小さい子供が2人いるので、将来は子供部屋を2つに区切りたい、あるいはもう一部屋ふやしたい――などというように、具体的に間取りの変更を予定している場合は、そのプランに沿って、スムーズに手を加えられるようにしておくと、その際の工事の手間を抑えることができ、出費が少なくてすみます。

たとえば、子供部屋を2つに区切るなら、あらかじめドアを2つ設け、両側に照明器具や窓などを配しておきます。
部屋をふやしたいなら、吹き抜けの部分に頑丈な梁を渡しておき、その梁の上に部屋を設けるという方法も。

ただ、確実でない予定のために予算をさくのは、予定通りにならずにムダになることも多いので、おすすめしません。

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低金利で公庫の融資を受けるには

住宅ローンを組んで家づくりをする場合、せっかく建築コストを下げても、その金利が高いと、払うお金は結局高くなってしまいます。

住宅金融公庫から、最も低い「基準金利」で融資を受けるには、床面積を80m2以上175m2以下とし、公庫の定めた「耐久性タイプ」の基準を満たしたうえで、さらに選択基準の「バリアフリータイプ」と「省エネルギータイプ」のどちらかを選びます。
「耐久性タイプ」の基準には、耐久性を高めるための条件がこまかく定められているため、コストを抑えても、安心できる家づくりの目安となります。詳細は住宅金融公庫(TEL03−3812−1111)へ。



注文住宅のコストダウン 知っておきたい基礎知識
注文住宅のコストダウン テクニック1 プランニングの工夫
注文住宅のコストダウン テクニック2 使用材料、設備で工夫
注文住宅のコストダウン テクニック3 施工面で工夫


テクニック<2> 使用する材料・設備でコストダウン

合理的なプランニングができたら、次は外装・内装などの材料や設備機器の決定です。自分たちの暮らしを見きわめて適切なものを選び、もしも味気なさを感じたら、一点豪華主義で解消するなどの工夫を。


外装・内装とも材料はなるべく統一する
なるべく広く普及している材料を使用する
湿式工法より乾式工法に
自然素材にこだわるなら、こんな材料を
和室を設ける場合は真壁より大壁に
設備機器はシンプルな機能に
バスはシステムバスに
システムキッチンを実現させるには
照明器具はシンプルに
造りつけ収納を設けるときは
メーカーと直接契約するのも一案


コストダウンするために、最低限、押さえておきたい知識をまとめました。
限られた予算内で家づくりを成功させるための秘訣が、少しずつ見えてくるはずです。


外装・内装とも材料はなるべく統一する

外装の場合

いろいろな材料や色をミックスさせた仕上げにするよりも、ひとつか2つの仕上げ方でまとめたほうがコストは抑えられます。

その理由は、施工会社がメーカーや問屋から材料を仕入れる際、多くの種類を少量ずつ仕入れるより、少ない種類のものを多量に仕入れるほうが、それだけ仕入れ価格を低めに設定できるからです。
また、施工する職種も少なくなるため、その点でもコストを下げられます。

職種をしぼる、ということから考えると、外壁をサイディング仕上げにすれば、構造部をつくるのと同じ大工職が担当できるため、コストを抑えられます。

また、窓のサッシも家じゅうであれこれ材質やデザインを変えず、なるべく同じもので統一したほうがコストを下げられます。

以上のように材料の種類を少なく抑えれば、スッキリした統一感のある外観になるというメリットもあるのです。


内装の場合

外装の場合と同様に、内装材もなるべく統一したほうが、コストダウンにつながります。

内装材とは、床、壁、天井に使用する材料や、ドアなどの建具です。

コストダウンにつながる理由も、外装材の場合と同様で、少ない種類のものを多量に仕入れたほうが、仕入れ値を安くできるからです。

また、職種をしぼることについて例をあげると、壁の仕上げを、ある部屋はビニールクロース張りにし、別の部屋はしっくい仕上げにすると、2つの部屋で違う職種の手が必要になるため、人件費が上がってしまいます。

さらに、使う材料の種類が少ないほうが、ムダが出にくい、ということもいえます。
たとえば部屋ごとに違うクロースを使用すると、それぞれ半端に残ってしまい、その分ムダになりますが、家じゅうの壁、あるいは壁と天井を同じクロースで統一すれば、そういったムダをなくすことができます。

ただし、それではあまりにも単調で味気ないと感じる人は、トイレや洗面所のような小さなスペースに、ほかの部屋とは違う、好みの色柄の仕上げ材を使うことをおすすめします。
これだけでも気分を変えるのに効果的なので、試してみてください。

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なるべく広く普及している材料を使用する

これは、内装・外装ともにいえることですが、目新しく変わった素材や建材より、広く普及しているものを使ったほうがコストを抑えられます。

普及品=量産品ということで、単価が安いということのほかに、現場の職人さんが使いなれているため、工事がスムーズに進むというメリットがあるのです。
慣れない材料で扱いに手間取ると、工期が延びたり、扱い方をまちがえて工事をやり直したり、といったムダが出て、コストアップにつながってしまいます。

また、建具類などに既製品を用いずオーダーすると、当然コストは上がります。

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湿式工法より乾式工法に

湿式工法とは、モルタルやしっくいのような、水を混合した材料を用いて工事を行う工法で、いわゆる左官工事のことです。

これに対して乾式工法とは、水を混合した材料を用いない工法で、たとえば外壁ならサイディング張り、内装ならビニールクロース仕上げなどをさします。

一般的に湿式工法のほうが工事がむずかしく、何回も塗ったり、乾燥させたりするために時間が必要です。
その間、ほかの仕事ができず、日数がかかります。
最近不足している熟練した左官職人の手も必要となるため、人件費のコストが上がってしまうのです。

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自然素材にこだわるなら、こんな材料を

「これだけは知っておきたい基礎知識」のところでもお話ししたように、自然素材を多用すると、コストは上がってしまいます。
けれど、どうしてもナチュラルな素材にこだわりたい、という人は、次のような素材を検討してみてはどうでしょう。

天然木のなかで価格が安いのは松です。
また、外壁やウッドデッキのような場所なら、足場を組むのに使う足場板(素材は松)を使えば、さらにコストを抑えられます。
節のある木を利用してコストダウンする方法もあるようですが、工務店に、そのような素材を安く仕入れるルートがないと、かえって高くついてしまう場合もあるので、確認してください。

また、合板を使用するなら、木目をプリントしたプリント合板ではなく、表面に薄くても天然の木をはったものを使用するという手があります。

壁をしっくい仕上げにしたい場合は、自分で塗れるしっくいが登場しているので、DIYが好きな人や、そのための時間をとれる人にはおすすめします。

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和室を設ける場合は真壁より大壁に

柱を表に出す真壁の和室にして、長押、鴨居もつくり、床の間も設けると、洋室の2倍近い費用がかかってしまいます。
これは、柱などの材料が高いことと、工事の手間がかかるためです。

ですから、和室を設ける場合は、洋室と同様に柱を壁の中に入れる大壁にして、長押、鴨居、床の間もやめてシンプルな造りにすれば、コストダウンできます。

また、最近は和紙のように見えるビニールクロースも登場。
安価で、いかにも和の雰囲気にしつらえることができます。

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設備機器はシンプルな機能に

冷暖房器具、ガス給湯機、シャワーつき暖房便座、浴室乾燥機などの設備機器は、どんどん多機能化が進んでいます。
けれど、多くの機能が備わっていても、それを使いこなせないのでは意味がありません。
機能が多い分、当然コストがかかりますが、使いこなせなくては、かけた費用がまるでムダになってしまいます。

家族のライフスタイルに照らし合わせて考え、機能が少なくても、ほんとうに必要な機能がついている、シンプルなタイプを選んだほうが、コストを抑えられます。

床暖房も空調もいっしょというような、別の機能がひとつになっているタイプは、メンテナンスがしにくいので、その意味でもシンプルな単機能のタイプをおすすめします。

また、エアコンは部屋の優先順位をつけてとりつけるようにします。
現在必要なくても将来必要な部屋は、あとでとりつけ可能なように、コンセントなどを設置しておくとよいでしょう。

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バスはシステムバスに

「これだけは知っておきたい基礎知識」の2番目の項目で、工場でできるものはなるべく工場でつくり、現場の手間を省くとコストダウンにつながるという話をしましたが、浴室はこれにあてはまります。

システムバスは壁、床、浴槽に設備が組み込まれて、工場でユニット化されているので、従来のようにタイル張りや防水工事など、別々の職種の職人が連携してつくり上げる現場施工にくらべ、工期も短くてすみ、人件費のコストを抑えることができます。

ただ、システムバスも、ほかの設備機器同様、どんどん多機能化、高級化が進んでいます。
ジェットバスになっているものや、スイッチひとつで浴槽を自動洗浄できるもの、人造大理石の浴槽など、実にさまざまなタイプがあるので、自分たちの暮らしに合った、なるべくシンプルなものを選ぶようにしましょう。

なお、「システムバス」と「ユニットバス」というのは、金額のランクの違いではなく、メーカーによる呼び名の違いです。

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システムキッチンを実現させるには

「新居には絶対にシステムキッチンを入れたい」とあこがれる女性はとても多いもの。
つい、高級なタイプにひかれてしまい、家全体のコストを考えたときに、キッチンに特にコストがかかる、というケースも多いようです。

なるべくそのようなアンバランスが生じないように、キッチン選びはぜひ冷静に。
高価なタイプなら料理の効率が上がるかというと、そういうわけではありません。
高価なタイプは、あまり必要とは思えない機能がふんだんについていたり、扉やワークトップに高級な素材を使用したりしているのです。
自分の料理のレパートリーなどを考えて、必要最低限の機能のものを選ぶようにしましょう。

たとえば、韓国製の「東和」というメーカーのシステムキッチンは、日本の同等タイプと比較して2分の1以下の価格なので、おすすめ。
ガスコンロなどの設備機器は日本製を入れるので、メンテナンスの点も心配ありません。

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照明器具はシンプルに

家じゅうの照明器具を、どれもデザインのこったものにすると、それだけでかなりの金額になってしまします。

照明は、照明器具より、明かりそのものの美しさを楽しむと割り切って、シンプルなダウンライトやスポット照明を多くとり入れることをおすすめします。

これらをすべて白熱灯にすると、ランニングコストがかかりますが、ダウンライトに使える、白熱灯と同じ形の蛍光灯があるので、場所によって使い分けるといいでしょう。

このように、ほとんどの場所をシンプルな照明器具にしておいて、ポイント的にこった照明器具を使うと、メリハリがついて引き立ちます。

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造りつけ収納を設けるときは

造りつけ収納を設けると、その分コストがかかるので、まだまだ使える家具や、愛着のある家具がある場合は、新築後も生かせるプランを考えてみましょう。
たとえば、手持ちのタンスをピッタリ置けるウォークインクローゼットはその一例。
こまかい棚をつくらずにすむので、コストダウンにつながります。

造りつけ収納を設ける場合は、家具工事や大工仕事でつくるより、システム収納家具のような既製の家具をとりつけたほうがコストがかかりません。
ピッタリとおさまるスペースをあらかじめ確保しておけば、現場ではとりつけるだけなので、手間が最小限に抑えられます。

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メーカーと直接契約するのも一案

冷暖房器具などの設備機器は、工務店を通して入れるより、建主がメーカーと直接契約したほうが、安くなる場合が多いので、検討してみてください(ただし、メーカーに対して力関係の強い大手の工務店の場合は、直接契約するより安くなることが多い)。

その際には、必ず複数のメーカーから合い見積もりをとるようにします。
すると、同様の機種でも、とりつけ工事費も含めて、2割ほどコストに差が出ることが多いのです。

システムキッチンのメーカーは、建主と直接契約を結ぶことは少ないのですが、あきらめずにトライしてみると、意外と安く契約できることがあります。

また、知り合いや家族にメーカー勤務の人がいる場合は、ぜひそのつてを利用しましょう。

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注文住宅のコストダウン 知っておきたい基礎知識
注文住宅のコストダウン テクニック1 プランニングの工夫
注文住宅のコストダウン テクニック2 使用材料、設備で工夫
注文住宅のコストダウン テクニック3 施工面で工夫


テクニック<3> 施工面でのコストダウン

コストダウンのために忘れてならないのは、施工面での工事の流れを考え、手間を簡略し、費用を抑えること。
それにはなるべくプロの目を借りて、工務店の見積りをこまかくチェックしてもらうと安心。


見積りは複数の工務店からとる
見積り金額を予算内におさめるには
着工前、着工後の注意点


見積りは複数の工務店からとる

工務店を決めるときは、必ず複数の工務店から合い見積もりをとって、比較検討します。

工務店によって製品単価、材料費、工事費はすべて違い、会社経費も一律ではないため、全く同じ図面で見積もりをとっても、たいてい差額が約1〜2割出るのです。

工務店の選び方で何百万という差額が出るのですから、これはコストを抑えるための大きなポイントです。

ただ、あまり安いところはきちんとした工事をしてくれるかどうか心配になります。

そこで、建主が自分で判断する場合は、施工例を見せてもらったり、近所の評判を聞く、あるいは何回か話し合いの機会を設け、信頼できるところかどうかを見きわめる(実際にその工務店まで足を運んでみると、工務店の規模や、内部の人間関係の雰囲気などがわかって、参考になります)、などの方法をとって、最終的に結論を出しましょう。

家づくりを設計事務所に依頼した場合は、建築家(設計者)が見積もりの内容や技量のチェックしてくれるので安心です。

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見積もり金額を予算内におさめるには

前項のようにして合い見積もりをとり、金額、技量とも納得のゆく工務店を選びますが、それでも見積もり金額が予算よりオーバーしていることもあります。

その場合、他社と比較したり、全体のバランスを見て、極端にコストがかかっている項目について、金額を下げられないか交渉します。
ただし、見積もりの項目をひとつひとつチェックするのはとてもむずかしいので、建築家にまかせたほうが安心です。
間に建築家が入らない場合は、いずれかの項目に疑問を感じたら、納得のゆくまで説明を受け、金額を下げられるところは下げてもらいましょう。

どの項目も妥当な金額が出ている場合は、仕上げの材料を価格の低いものに変更したり、あどで設置できる設備機器は配管などだけすませて今回は見送ったり、外構も見送るなどの方法で予算内におさめるようにします。

反対にコストを削ってはいけないのは、安全にかかわる基礎、構造にかかる部分や、あとから設置しにくい設備機器などの費用です。
部屋の広さも、コストダウンのためにムリに削ってしまうと、あとあと後悔するので注意を。

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着工前、着工後の注意点

安く建てたのはいいけれど、工事が手抜き工事だった、というのではなんにもなりません。
そこで、設計事務所に依頼している場合は、建築家に現場へどの程度の頻度で行って、工事内容をチェックしてもらえるかを確認しましょう。

特に基礎はあとで見えなくなってしまうため、なるべく建築家に足を運んでもらい、工事内容を確認してもらうと安心。

1基礎の割りぐり石を所定の深さ、厚さに入れているか。
2コンクリートの鉄筋の組み方は適切か。
3アンカーボルトなどが、見えなくなるところまできちんと埋まっているか。

などです。
そのほか、土中に埋まってしまう設備もチェックしてもらいます。

このように、プロにチェックしてもらうなどした結果、適切な工事が行われていない場合は、当然、工務店の負担で工事をやり直してもらいます。

ただし、着工後に建主の考えが変わったなどの理由で工事を変更、追加すると、コストが上がってしまうので、なるべく避けるようにします。
どうしても変更や追加をしたい場合は、決断を早くして、なるべく早めに手を打つことで、コストアップを最小限に抑えます。
その場合、あとでトラブルにならないように、変更や追加をするといくらかかるのか、きちんと把握することが大切です。

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