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基礎や構造といった安全にかかわる部分は、コストを削るべきではありません。
また、部屋の広さも、最低限自分たちに必要な広さは確保したいもの。
特に生活の中心になるLDを、コストを抑えるために狭くしてしまうと、せっかく家を建てても快適な暮らしができません。
車庫も、もし2台分必要なら、多少コストがかかっても2台分つくっておくことをおすすめします。
でないと結局、別に駐車場を借りることになり、出費がかさんでしまうのです。
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「コスト」と一口に言っても、大きく2つの意味があります。
ひとつは「イニシアルコスト」で、これは、「イニシアル」「初めの」の意味どおり、工事費や設備の購入・設置など、住まいの建築時にかかる費用。
もうひとつは「ランニングコスト」で、「ランニング」、つまり運転するの意味からもわかるように、快適な暮らしを維持するためのコストです。
一般的に、コストダウンというと、「イニシアルコスト」を中心に考えますが、「ランニングコスト」を抑えることも考えて、冷暖房費を抑えられるような、通風や採光に配慮したプランにするなど、工夫したいものです(テクニック(1)を参照)。
ただ、ランニングコストを抑えようとすると、どうしてもイニシアルコストがかかる場合もあるので、どちらを優先させるかをよく検討してください。
たとえば、外壁を長もちさせる塗装はコストがかかりますが、その部分でコストダウンすると、必要なメンテナンスの頻度は高くなります。
つまり、「美しさが長もちする家」と、「手入れして長もちさせる家」のどちらを選ぶかということです。
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限られた予算内では、あれもこれもとすべての希望をかなえることはできません。
ですから、自分の希望が予算と折り合わないときは、そのこだわりがほんとうに必要か、見直す必要があります。
たとえば、今注目されている自然素材。
それほど強い自然志向ではなく、健康面でも、すべて自然素材にしなければ健康を維持できないという体質ではないのに、周りのブームに押されて、「これでなければ」と思い込んでしまう人もいるようです。
ちなみに、健康に配慮した自然素材を家じゅうに使うと、本体工事費が約1割増しになるといわれています。
このように、過剰なこだわりをなくすことでコストダウンできるケースは、意外と多いのです。
けれど、どうしてもあきらめられないときは、家の完成後も悔いを引きずらないように、ムリにあきらめるのではなく、代替案でフォローすることを考えましょう。
たとえば、健康に配慮した住まいにしたいなら、自然素材を使うかわりに、窓の配置を工夫したり、中庭を設けるなどして通風をよくします。
こうして住まいに十分風を通せば、ダニやカビ、結露の発生は防げるのです。
コストダウンするといっても、最低1000万円以上かかる大きな買い物。
あきらめのつく部分、つかない部分をきちんと整理して、後悔のない家づくりを。
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基礎知識の最後に、コストとプライスの違いにふれたいと思います。
一方 とは、建主が施工者(工務店やハウスメーカー)に実際に支払う金額。
この中にはコストのほかに営業経費や利益が入ります。
つまり、努力してコストを抑えても、プライスが高ければ、その努力がムダになるというわけです。
ですから、まず、どんな材料を使っているのかなど、工事内容を明確にして、コストが適正かどうかを確認し、そのうえでプライスが適正かどうかを見きわめたいものです。
見積りは素人ではわかりにくい部分が多いのですが、不明点は納得のゆくまで質問することが大切です。
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コストには、設計では解決できない要因があり、そのひとつは、地域や土地による条件の違いです。
たとえば、職人の賃金は地域によって違います。
軟弱な地盤に建てる場合は、基礎をしっかりしたものにしなければならず、その分、コストがアップ。
また、首都圏の住宅密集地は、資材置場がなかったり、車が止められなかったりするため、駐車場などを借りなければなりません。
交通渋滞で材料の運搬や職人、関係者の移動に時間がかかり、人件費のロスが大きくなったり、近隣建物への配慮が必要となって仮設費、諸経費が割高になったりするなどの理由で、一般住宅地よりコストが10%ほど上がります。
もし土地の選択肢があるなら、このような場所は避けたほうがコストを抑えられます。
時期もコストの影響しますが、バブルのころにくらべれば、現在のほうが、たいての工務店が抑えめの賃金で工事を請け負ってくれるうえ、住宅ローンの金利も低いため(住宅金融公庫の金利についてはテクニック(1)のコラムを参照)、その意味では、現在は建てるチャンスといえるでしょう。
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テクニック<1> プランニングの工夫でコストダウン |
具体的なコストダウンテクニックの最初にご紹介するのは、家の形や間取りなど、プランニングに関するもの。 |
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屋根の形も複雑になると、材料や工事の手間が余分にかかり、コストアップしてしまいます。
コストダウンにつながるのは、切妻屋根(下のイラストの右側を参照)のような、ごくシンプルな屋根です。
ただ、形がシンプルでも、勾配がきついとその分屋根の面積が広くなり、6寸勾配以上になると
、足場を組まなければならないため、足場の材料や手間がかかることになります。また、軒を出すとその分屋根の面積が広くなり、軒裏を仕上げる手間もかかるため、意外とコストがかかります。
ただ、軒を出したほうが日ざしを遮ることができて冷房の費用を抑えられたり、外壁の傷みも少なく、塗りかえなどの頻度も抑えられます。
イニシアルコストを抑えるか、ランニングコストを抑えるかの問題なので、資金計画に合わせて検討してください。
狭小地の場合は、軒を出さないほうが、コストを抑えられるだけでなく、その分建物を広くとることができます。
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「家の形をシンプルに」ということは、立体的なプランにも、そのままあてはまります。
総2階建てにすると、下屋部分(1階の屋根)をつくらなくてすむため、屋根の面積を減らすことができ、一部2階建てとくらべると、10〜15%も安くなります。
また、通し柱や梁などの構造がシンプルになって、その分、木材が少なくてすみます。
総2階にすると、このようにコストダウンにつながるだけでなく、2階も1階と同じだけ床面積がとれるため、スペースを最大限確保できます。
「予算を抑えて、しかも広く」という2つの要望を、同時に満たすことができるのです。
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部屋数を多くとって仕切りをふやすと、壁や建具などの材料がふえ、工事の手間もかかるため、コストアップしてしまいます。
また、部屋が多い分、照明器具やコンセントなどもふえ、設備関係の費用もかかってきます。
間取りを考える際、つい「○部屋ほしい」というように、部屋数を多くとることを考えがちですが、実際には、部屋数がふえると、各部屋の面積は小さくなって、開放感が得られないというデメリットもあるのです。
リビング、ダイニング、キッチンをそれぞれ独立させるのではなく、広々としたLDKをとり、間はカウンターで仕切るなどの方法をとると、コストダウンにつながり、同時に開放感も得られます。
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キッチン、浴室、洗面所、トイレといった水回りを1ヶ所にまとめると、上・下水道や給湯配管が短くなるため、配管工事費を抑えることができます。
このように水周りを1ヶ所に集中させると、料理と洗濯などを短い動線で行うことができ、家事効率があがるというメリットも得られます。
ただし、階ごとにまとまっていても、たとえば2階のトイレと1階の水回りの場所が離れていたのでは、それだけ配管を延ばさなければならず、ムダが生じるので、上・下階でも、位置をそろえるように注意しましょう。
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日当たりや風通しに配慮したプランにすると、夏涼しく、冬あたたかくなって快適に過ごせるのはもちろん、冷暖房費を抑えることができる、つまり、ランニングコストを抑えることができます。
日当たりをよくしたいけれど、住宅密集地などのため、思うように窓がとれない場合は、高窓や天窓を設けると、プライバシーを守りながら、日ざしをとりこめます。
反対に夏の強い日ざしを遮るには、軒やひさしを出すのが効果的ですが、前述の屋根の項でも説明したように、イニシアルコストは高くなってしまうので、ランニングコストとどちらを優先させるかを、検討してください。
通風をよくするためには、風の通り道を考えて東西南北に窓を配しますが、大きな窓がとれないところも、通風のための小窓を設けるだけで違います。
窓の高さは高低差をつけると、効率よく風が通ります。
また、中庭を設けると採光、通風ともよくなって快適。
その分部屋は狭くなりますが、視覚的にはぐんと広がりが感じられ、心のゆとりにもつながります。
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小さい子供が2人いるので、将来は子供部屋を2つに区切りたい、あるいはもう一部屋ふやしたい――などというように、具体的に間取りの変更を予定している場合は、そのプランに沿って、スムーズに手を加えられるようにしておくと、その際の工事の手間を抑えることができ、出費が少なくてすみます。
たとえば、子供部屋を2つに区切るなら、あらかじめドアを2つ設け、両側に照明器具や窓などを配しておきます。
部屋をふやしたいなら、吹き抜けの部分に頑丈な梁を渡しておき、その梁の上に部屋を設けるという方法も。
ただ、確実でない予定のために予算をさくのは、予定通りにならずにムダになることも多いので、おすすめしません。
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テクニック<2> 使用する材料・設備でコストダウン |
合理的なプランニングができたら、次は外装・内装などの材料や設備機器の決定です。自分たちの暮らしを見きわめて適切なものを選び、もしも味気なさを感じたら、一点豪華主義で解消するなどの工夫を。 |
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コストダウンするために、最低限、押さえておきたい知識をまとめました。 |
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これは、内装・外装ともにいえることですが、目新しく変わった素材や建材より、広く普及しているものを使ったほうがコストを抑えられます。
普及品=量産品ということで、単価が安いということのほかに、現場の職人さんが使いなれているため、工事がスムーズに進むというメリットがあるのです。
慣れない材料で扱いに手間取ると、工期が延びたり、扱い方をまちがえて工事をやり直したり、といったムダが出て、コストアップにつながってしまいます。
また、建具類などに既製品を用いずオーダーすると、当然コストは上がります。
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湿式工法とは、モルタルやしっくいのような、水を混合した材料を用いて工事を行う工法で、いわゆる左官工事のことです。
これに対して乾式工法とは、水を混合した材料を用いない工法で、たとえば外壁ならサイディング張り、内装ならビニールクロース仕上げなどをさします。
一般的に湿式工法のほうが工事がむずかしく、何回も塗ったり、乾燥させたりするために時間が必要です。
その間、ほかの仕事ができず、日数がかかります。
最近不足している熟練した左官職人の手も必要となるため、人件費のコストが上がってしまうのです。
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「これだけは知っておきたい基礎知識」のところでもお話ししたように、自然素材を多用すると、コストは上がってしまいます。
けれど、どうしてもナチュラルな素材にこだわりたい、という人は、次のような素材を検討してみてはどうでしょう。
天然木のなかで価格が安いのは松です。
また、外壁やウッドデッキのような場所なら、足場を組むのに使う足場板(素材は松)を使えば、さらにコストを抑えられます。
節のある木を利用してコストダウンする方法もあるようですが、工務店に、そのような素材を安く仕入れるルートがないと、かえって高くついてしまう場合もあるので、確認してください。
また、合板を使用するなら、木目をプリントしたプリント合板ではなく、表面に薄くても天然の木をはったものを使用するという手があります。
壁をしっくい仕上げにしたい場合は、自分で塗れるしっくいが登場しているので、DIYが好きな人や、そのための時間をとれる人にはおすすめします。
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柱を表に出す真壁の和室にして、長押、鴨居もつくり、床の間も設けると、洋室の2倍近い費用がかかってしまいます。
これは、柱などの材料が高いことと、工事の手間がかかるためです。
ですから、和室を設ける場合は、洋室と同様に柱を壁の中に入れる大壁にして、長押、鴨居、床の間もやめてシンプルな造りにすれば、コストダウンできます。
また、最近は和紙のように見えるビニールクロースも登場。
安価で、いかにも和の雰囲気にしつらえることができます。
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冷暖房器具、ガス給湯機、シャワーつき暖房便座、浴室乾燥機などの設備機器は、どんどん多機能化が進んでいます。
けれど、多くの機能が備わっていても、それを使いこなせないのでは意味がありません。
機能が多い分、当然コストがかかりますが、使いこなせなくては、かけた費用がまるでムダになってしまいます。
家族のライフスタイルに照らし合わせて考え、機能が少なくても、ほんとうに必要な機能がついている、シンプルなタイプを選んだほうが、コストを抑えられます。
床暖房も空調もいっしょというような、別の機能がひとつになっているタイプは、メンテナンスがしにくいので、その意味でもシンプルな単機能のタイプをおすすめします。
また、エアコンは部屋の優先順位をつけてとりつけるようにします。
現在必要なくても将来必要な部屋は、あとでとりつけ可能なように、コンセントなどを設置しておくとよいでしょう。
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「これだけは知っておきたい基礎知識」の2番目の項目で、工場でできるものはなるべく工場でつくり、現場の手間を省くとコストダウンにつながるという話をしましたが、浴室はこれにあてはまります。
システムバスは壁、床、浴槽に設備が組み込まれて、工場でユニット化されているので、従来のようにタイル張りや防水工事など、別々の職種の職人が連携してつくり上げる現場施工にくらべ、工期も短くてすみ、人件費のコストを抑えることができます。
ただ、システムバスも、ほかの設備機器同様、どんどん多機能化、高級化が進んでいます。
ジェットバスになっているものや、スイッチひとつで浴槽を自動洗浄できるもの、人造大理石の浴槽など、実にさまざまなタイプがあるので、自分たちの暮らしに合った、なるべくシンプルなものを選ぶようにしましょう。
なお、「システムバス」と「ユニットバス」というのは、金額のランクの違いではなく、メーカーによる呼び名の違いです。
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「新居には絶対にシステムキッチンを入れたい」とあこがれる女性はとても多いもの。
つい、高級なタイプにひかれてしまい、家全体のコストを考えたときに、キッチンに特にコストがかかる、というケースも多いようです。
なるべくそのようなアンバランスが生じないように、キッチン選びはぜひ冷静に。
高価なタイプなら料理の効率が上がるかというと、そういうわけではありません。
高価なタイプは、あまり必要とは思えない機能がふんだんについていたり、扉やワークトップに高級な素材を使用したりしているのです。
自分の料理のレパートリーなどを考えて、必要最低限の機能のものを選ぶようにしましょう。
たとえば、韓国製の「東和」というメーカーのシステムキッチンは、日本の同等タイプと比較して2分の1以下の価格なので、おすすめ。
ガスコンロなどの設備機器は日本製を入れるので、メンテナンスの点も心配ありません。
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家じゅうの照明器具を、どれもデザインのこったものにすると、それだけでかなりの金額になってしまします。
照明は、照明器具より、明かりそのものの美しさを楽しむと割り切って、シンプルなダウンライトやスポット照明を多くとり入れることをおすすめします。
これらをすべて白熱灯にすると、ランニングコストがかかりますが、ダウンライトに使える、白熱灯と同じ形の蛍光灯があるので、場所によって使い分けるといいでしょう。
このように、ほとんどの場所をシンプルな照明器具にしておいて、ポイント的にこった照明器具を使うと、メリハリがついて引き立ちます。
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造りつけ収納を設けると、その分コストがかかるので、まだまだ使える家具や、愛着のある家具がある場合は、新築後も生かせるプランを考えてみましょう。
たとえば、手持ちのタンスをピッタリ置けるウォークインクローゼットはその一例。
こまかい棚をつくらずにすむので、コストダウンにつながります。
造りつけ収納を設ける場合は、家具工事や大工仕事でつくるより、システム収納家具のような既製の家具をとりつけたほうがコストがかかりません。
ピッタリとおさまるスペースをあらかじめ確保しておけば、現場ではとりつけるだけなので、手間が最小限に抑えられます。
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冷暖房器具などの設備機器は、工務店を通して入れるより、建主がメーカーと直接契約したほうが、安くなる場合が多いので、検討してみてください(ただし、メーカーに対して力関係の強い大手の工務店の場合は、直接契約するより安くなることが多い)。
その際には、必ず複数のメーカーから合い見積もりをとるようにします。
すると、同様の機種でも、とりつけ工事費も含めて、2割ほどコストに差が出ることが多いのです。
システムキッチンのメーカーは、建主と直接契約を結ぶことは少ないのですが、あきらめずにトライしてみると、意外と安く契約できることがあります。
また、知り合いや家族にメーカー勤務の人がいる場合は、ぜひそのつてを利用しましょう。
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テクニック<3> 施工面でのコストダウン |
コストダウンのために忘れてならないのは、施工面での工事の流れを考え、手間を簡略し、費用を抑えること。 |
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