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1000万円台の住まいづくり秘ノート

ローコストの注文住宅 (1)住まいづくりを考えるきっかけ
ローコストの注文住宅 (2)背中を押すものは
ローコストの注文住宅 (3)決断させるものは
ローコストの注文住宅 (4)資金計画
ローコストの注文住宅 (5)体力と忍耐力を使った後は喜びも大きい
自己資金ゼロのスタート。
資金づくりに銀行を駆け回って「1321万円の家」をついに完成させた
T さん(埼玉・北葛飾郡)の場合

建築家の山城正幸さんのもとには「少ない予算で家を建てたい」と相談に来る人がたくさんいるそうです。
というのも、山城さん、本誌に1000万円台のステキな家を何軒も発表していらっしゃるからです。
少ない予算のときには、特に資金計画が重要になります。

そこで山城さんは設計者の立場を超えて親身になってアドバイスし、時には建主の代わりに銀行にまでカケ合ってしまうことがあるそうです。

そんな山城さんが明かす、低予算で家づくりを成功させるための
"資金づくりまる秘ノート"連載スタートです。

 

住宅を建てようと思う時、人それぞれいろいろきっかけがあると思います。
Tさん(42)の場合は、弟さんが新築したのを見て、Tさんの奥様が奮闘したというのが本当でしょうか。

Tさん一家は、常磐線松戸の駅からバスで数十分の所で、借家住まいをしていました。
私が1年前に弟さんの住宅の設計をした関係から、Tさんとは何度か会う機会はあったのですが、その時は特別、住宅を考えている様子もなく、話題にもなりませんでした。

話が持ちあがったのは、弟さんの方からでした。
「私は10年前に建て売りを買い、今回新築をしたのに、兄キは5歳も年上なのに家一軒も持っていない。なんとかならないか?」というのです。
私が、「本人からは何の話もないのに、相談の乗りようがない。」と言うと、
「兄キには15年前、姉さんに薦められて買った土地があるはず。兄キは周りから言わないと先に進まないから何とか相談に乗ってくれ」。
押しの強い弟さんは、とうとう私の事務所まで、Tさんを連れて来てしまったのです。

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ローコストの注文住宅 (3)決断させるものは
ローコストの注文住宅 (4)資金計画
ローコストの注文住宅 (5)体力と忍耐力を使った後は喜びも大きい


15年前に買った土地はあるが、貯金がないからとあきらめていた

話を聞くと積極的になれない理由がいくつかありました。

貯金がないこと(自己資金ゼロ)
現在4万円の家賃で借家住まいでも、親子5人の部屋が確保できていること
子供たち3人は、小学5年生を頭に全員小学校に入学していて
   学校を移りたくないということ
奥さまも近所に友達、そしてサークルの仲間がたくさんいること

などでした。

でもいろいろ話をしていると、新しい家を建てるのが嫌なのではなくて、無理とあきらめているのが本音だったのです。
ですから15年前に埼玉の北葛飾郡に買った土地も10年前に一度見に行ったきり、ということでした。

「土地はあっても自己資金がゼロでは……」と私が頭をかかえていると、
「当面の設計料はほかの兄弟でなんとかする。まず先に進めることを考えてくれ。」と、またまた弟さんが押してきました。
承知するまで動きそうもなかったので、「まず、松戸の家族全員に会わせてください。」と話してその日は別れました。

何日かして、案内図が届き、敷地を見に行ってきました。
とくに高低差もなく問題はなっかったのですが、地域指定が調整区域だったのです。
調整区域でも家を建てるのに問題はないので、その時は気にもしなかったのですが、後でこれが資金調達面で大きな問題になったのです。

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「本当に建つんですか?」が、「もしかしたら建てられる……」に

Tさんが事務所に来てから半月後、松戸の借家にうかがって、現在の生活ぶりを拝見し、家族全員と会ってとりとめのない話をしました。
また、家に対する考えなども聞きました。

ところが、主体性がないのです。
出てくる言葉は、「本当に建てることができるんですか?」(奥さま)
「建ててくれるならどんな家でもいい。」(ご主人)
こちらとしては本末転倒です。

本来なら設計者の出番ではないので、ここで終わってもよかったのですが、話しているうちに
「本当に自分たちの家が持てたらどんなにステキだろう。夢みたい。」
などと言うようになりました。

こちらとしてもなんとかできないものかと思いはじめ、設計者であることを忘れてお金の工面のことまで顔を突っ込んでしまったのです。
家の計画に必要な資料より先に、資金の調達の相談となり、なんとも解せぬまま帰路につきました。
電話で何回か話しているうちに、Tさんも「もしかしたら……」と思ってきたようです。


条件が悪いのを承知の上で、奥さまの決断で設計スタート

気持ちが乗ってきたところで、まず住宅の計画になるのですが、今回は設計に手をつけませんでした。
平面図もなにもなしで、資金計画書を作成して1回目の打合せをしました。

「私どもで、最低の建設資金はこれくらいかかるでしょう。」
「建設会社はここでよければ交渉してみます。」
「子供室はたぶん屋根裏になるでしょう。」
「仕上材は良いものは使えません。」
「銀行はだいじょうぶですか?」
など条件の悪いこと、大変なことを並べて説明し、
「それでは建てるのは大変、あきらめます……」の一言を待っていました。

ところが、奥さまが、「お願いします。頑張ります。ね、お父さん」と一言。
私が帰ってから2人で資金繰りについて長時間話し合ったことは想像がつきます。
ともかく設計はスタートを切りました。

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アテにしていた年金が借りられない 公庫730万円と残りは銀行からに

まず、建設資金は住宅金融公庫、年金融資など金利の安いものから借りることを考えました。
ほかも問い合わせてみましたが、千葉県から埼玉県に移る場合は自治体融資は受けられません。
また、長期的に住宅建設プランを立てていたわけではないので、財形などの融資も利用できず、公庫と年金の借入資金の中で進めるしかありませんでした。

ところが平面計画の打合せをし、模型をつくり、このまま順調に進むと思われた設計計画も、この融資の面で第一の狂いが生じたのです。
Tさんは自由業で、20年も組合年金を払っていると言っていたのですが、3年前から年金は高いからと支払ってなかったのです。
組合に問い合わせて何か方法はないかと聞きましたが、無理とのこと。
公庫融資のみで考えるしかありませんでした。

ところが、公庫融資も所得の申告が少ないので工事費全額借り入れができないのです。
月収60万〜70万円はあると言っていたので安心していたのですが……。
気を取り直し公庫の分、730万円と、残りは銀行から借り入れすることにしました。
銀行分の支払いが高くなる分、建設資金を落とすしかありません。
いよいよ建物のローコスト化は避けられません。


ローコストで設計の途中に銀行が突然、、「調整区域だから貸せない」と

設計者の本来の仕事でローコストの設計に取り組んでいる最中に、またまた奥さまから電話。
「銀行が調整区域の土地にお金は貸せない」と言ってきたとのこと。
公庫の申請をした時、同時に銀行にも借り入れの申請をして了解を得ていたのです。
「1回了承したのに……」と涙声でうったえてくる奥さまに
「わかりました。私から銀行に電話しましょう。」というのがやっと。
電話は切ったものの、なんと言えばいいのか分かりません。
「調整区域か……」と、ひとりごと。
建築するには何も支障はないが、資産として担保価値はないというわけです。
でも、今さら後には引けない。
すでにTさん一家に夢を与えてしまったのだから。

次の日から自分の知っている銀行、弟さんの時に融資を受けた銀行、そして奥さまには新しく住宅を建てる場所に近い信用金庫を回ってもらうことになりました。
しかし、公庫をすでに別の銀行で申請してあるので、融資のみを申し込むと条件が悪いものは受け付けてくれません。

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夫婦で交渉の努力が実って銀行が770万円の融資を承諾

ところが、銀行に問い合わせをしながら気付いたことが一つありました。
約束を一度したものを銀行の都合で「担保価値がないから」と、一言で片づけるわけにはいかないのではないかと!

そこで、元の銀行にどうすればいいかを聞いて、必要な書類を奥さまが集めて回ったり、Tさんも奥さまに任せておけずに、何度か銀行に足を運んで交渉しましたが色よい返事はありません。

私も銀行に電話で
「調整区域といっても家を建てることができる場所で、違反するわけではないから担保価値を調べてくれ。」とお願いをしておきました。

そうしているうちに公庫の融資予約の通知書が届いたので、
「まず、建築確認申請を出して銀行の担当者にプレッシャーをかけましょう。」と提案。
「大丈夫ですか?」「分かりません。」と、運を天に任せた格好でいました。

2ヶ月程経ったでしょうか。
奥さまから電話で
「銀行から400万円は借入可能と返事がきたが、何かいろいろ数字を並べてあってよく分からない。」とのこと。
私から銀行へ電話して調整。
そして翌日、Tさん夫妻と銀行へ行って、どうしても700万円必要であることを説明しましたが、担当者は煩わしいことこの上ないという顔。

果報は寝て待てとはよく言ったもの。
数日後、その銀行の担当者の北海道への転勤が決まり、融資の話をまとめたいので、工事見積書と返済が問題ないということを説明するものを持ってくるようにとのこと。
1週間後に770万円の融資の了解を取り付けてホッと一安心。
この間、まったく不慣れな融資の話を冷たい銀行マンと進めた奥さまは大変でした。


予算300万円オーバーも工務店の値引きで無事完成

資金の話と併行して進められた設計も、Tさんは「住めればいい」の一点張り。
何かと言うと「迷惑がかかって悪いし、大変ですし。」と任されてしまいました。

本来このような家づくりはしたくはないのです。
どんなローコストの住宅でも、住む人のために私たち設計者はテーマを決めて設計を進めます。
そのよりどころとするものが、どんな生活をしたいか、という建主の希望なのです。

今回は行きがかり上、仕方ないと進めました。
施工者も私共の知っている工務店にお願いをして協力してもらいました。
特に工事見積りで予算より300万円高くなったにもかかわらず、一部の変更と値引きによって予算内で無事着工できました。

設計スタート時はどうなることかと心配しましたが、工事中は特別なこともなく現場は進み無事完成しました。
引渡しできたときは、今までには味わったことのないような疲労が残りました。

ローコスト住宅を引き受けると、工事が終了するまでは毎度のことながら、「なぜこんな設計を引き受けてしまったのか」と後悔します。
でもまた同じことを性懲りもなく繰り返すのです。
どんな住宅でも、住まいをつくるのは、携わる人全員が力を合わせ、最後は全員が喜びを分かち合えるからで、苦労が大きいほどその喜びは大きいからです。

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